2021年3月20日土曜日

2021.3.21 JAECS語彙SIG 2000年度研究会(オンライン)

実施報告(2021.3.21)
30名以上の参加があり,盛況でした。ご発表の先生方,ご参会の先生がた,また運営の先生方,ありがとうございました。

Zoom会議風景(匿名加工済み)


英語コーパス学会(JAECS)語彙SIG 2020年度研究会 プログラム


※SIGメンバー以外で参加お申し込みの方は,事務局までご連絡ください。


〇日時:2021 年 3 月 21 日(日)13 時~16 時

〇参加資格:どなたでもご参加いただけます

〇参加申込方法:下記よりお申し込みください(※人数を超過した場合は先着順で締め切ります)
https://forms.gle/TzHi2KJRvXyrpLxr8


〇プログラム

13 時~13 時 10 分
開会(接続確認等を含む)

13 時 10 分~13 時 40 分:
「対応分析による形容詞のレベル別の特徴抽出―日本語読解教材を例に―」
劉婧怡(九州大学大学院地球社会統合科学府)
【キーワード】形容詞,日本語教育,対応分析
【発表概要】本研究は、多変量解析の一つである対応分析を用いて、日本語教育の観点から形容詞のレベル別の特徴を考察することを目的とする。具体的には、形容詞研究の現状および日本語教育における必要性を明確した上で、本研究で用いた自作データベースである『レベル別日本語読解教材コーパス』の作成方法や手順などを紹介する。次に、レベル別の形容詞の特徴を明確するため、各レベルの高頻度形容詞を『分類語彙表増補改訂版データベース』(2004)に基づいて分類した結果に基づいて、対応分析および用例分析を行う。その結果、「関係-量」(例:高い)「関係-様相」(例:悪い)を表す形容詞の使用はどのレベルでも共通点があること、また、レベル間で出現する形容詞種類や抽象度の違いなどが明確になった。つまり、上級レベルでは、初中級より形容詞意味の抽象性や客観性の上昇が顕著に見られることが明らかになった。

13 時 45 分~14 時 15 分:
「日本語読解教材コーパスにおける「自分」のレベル別の特徴分析―BCCWJ との対照を中心に―」
靳夢瑩(九州大学大学院地球社会統合科学府)
【キーワード】日本語読解教材, 自称詞, 「自分」, 教材改善
【発表概要】本研究は、自作した『レベル別日本語読解教材コーパス』(以下教材コーパス)と日本語母語話者の書き言葉の汎用コーパスである BCCWJ を用いて、異なる発話場面において複数の用法を持つ「自分」の各用法の使用傾向を対照し、「自分」の使用特徴を明らかにすることを目的とする。「自分」の用法を先行研究に基づいて分類し、教材コーパスにおけるレベル別の「自分」の使用率とBCCWJ での「自分」の各用法の使用率を対照した。その結果、教材コーパスでは BCCWJ より初中級と中級で「再帰用法」の使用率が高かったこと、また、中上級と上級で「汎指用法」の使用率が高かったこと、さらに、教材コーパスでは「対称詞用法」の使用率が極めて低いことなどが明らかになった。これらの結果は、日本語読解教材における不足点を示しており、教材改善につながる示唆を与えるものである。

14 時 20 分~14 時 50 分:
「スピーキングコーパスを用いた英語学習者の発達指標の特定」
阿部真理子(中央大学), 小林雄一郎(日本大学), 近藤悠介(早稲田大学), 藤原康弘(名城大学)
【キーワード】発達指標, 学習者言語, スピーキングコーパス
【発表概要】本研究は、学習者コーパスを用いて、英語スピーキング力の発達を多面的に解析することを目的とする。使用したデータは、Longitudinal Corpus of L2 Spoken English (LOCSE)である。このコーパスは、同じような環境で英語学習を行なっている高校生 104 名から、3 年間で 8 回スピーキングデータを収集したものである。分析手法としては、Multidimensional Analysis Tagger (Nini, 2019)によってタグ付けを行なった後、ランダムフォレスト回帰により、発話者の総語数を予測できる言語項目の特定を行なった。その結果、原因を表す従属接続詞、等位接続詞、強調詞、名詞、前置詞、冠詞などが発達指標となることが示唆された。

14 時 55 分~15 時 25 分:
「屈折語(ポーランド語)の意味単位-予備的調査-」
肥沼実穂,佐野洋(東京外国語大学 言語文化学部)
【キーワード】ポーランド語,屈折語,語の意味の類似性
【発表概要】ポーランド語(スラブ諸語,屈折語類型)は複雑な屈折語形を持つ。名詞と形容詞は単数・複数の区別に加えて 7 つの格形と 3 つの名詞性をもつ。動詞は人称変化に加え,動作主になる名詞の性によって活用語尾が変化する(基本的に現在時制以外)。本報告は,ポーランド語形態素解析器(Morfeusz2)を用いて,National Corpus of Polish のサブコーパス(1-million-word sub corpus,3889 ファイル,総語数1220050 語,異なり語数 147208 語)を解析した事例報告である。異なり語単位での頻度情報のほか,word2vec (gensim ライブラリ)を利用して,類似語の傾向調査を行った。例えば,“czas”(time,時間)をみると,主格形では抽象化された意味と類似する語がよく表れ,他の屈折形では,役割や機能としての意味の語が類似の対象になっていた。特に前置格形では主格形や対格形と異なる語が類似していた。名詞は格語形によって類似とされる語が異なることが分かった。ポーランド語のような屈折語においては,曲用形は文の意味構成時に原形以上の働きを持つことがある。言語資料開発(教育利用)を目的として,今後,コーパス規模大きくするなど確認を進めたい。

15 時 30 分~16 時:
L2 vocabulary form-recall and the saliency of usage
Martin, Jeffrey (J. F. Oberlin University)
【キーワード】part of speech, word frequency, error analysis
【発表概要】The saliency of vocabulary usage in context can greatly depend on an L2 learner’s sensitivity to synonymy and lexical category (part of speech). The presentation is in two parts: (1) an assessment of written form-recall of vocabulary that draws attention to part of speech within carrier sentences and (2) a corpus-informed analysis of these response patterns. The results from 105 Japanese learners of English indicated that recurrent errors can be contrary to word frequency level and that many errors are attributable to the saliency of a word’s usage in a given context. It was found that appropriate word choice among synonymous vocabulary likely pivots on a learner’s understanding of lexical category and derivational morphology. Using a corpus-based approach, the presenter will offer a way to address these issues of L2 vocabulary production. Additionally, the discussion at the end of the presentation invites an exchange of ideas from the audience.